小噺『レコードには悪魔が宿る』

小噺
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こんにちは、やーみんです。
ブログの記事、もう少し上手に書きたいなと思い、天狼院書店のライティングゼミを受講しています。このゼミでは毎週、課題として2000字の文章を提出し、掲載レベルに達していると評価されたら「Web天狼院書店」に掲載してもらえます。

ネタがどうしても出なかったり、上手に書けたと思ったのに表記ミスの問題で不合格になったりとなかなか掲載に至らなかったのですが、この度、やっと合格出来て「Web天狼院書店」に掲載してもらえました。

レコードには悪魔が宿る|Web天狼院書店

まだまだ我ながら拙いとも思いますが、評価してもらえてとても嬉しかったです。上記のリンクから読むこともできますが、こちらにも転載しておきます。読んでもらえたら嬉しいです。

『レコードには悪魔が宿る』

レコードの売り上げが年々上がっているらしい。日本ではここ10年で10倍以上の売り上げになったし、アメリカでは2020年のレコードの売り上げがCDの売り上げを超えている。日本やアメリカだけの話ではなく、ほとんどの国でレコードの売り上げは年々上がってきている。
レコード好きの人は「レコードの方が絶対に音が良い!」という人も多いが私はそうは思わない。
ただし、曲によっては絶対にレコードで聴いた方が良いと思っている。

それは昔、こんな経験をしたからである。

今から10年ほど前、私は音楽の録音について勉強するために、音響関係の専門学校に通っていた。私は音楽を録音・編集するレコーディングエンジニアになりたかったのだ。そのため、学校で授業を受けるのはもちろん、邦楽・洋楽問わず様々な音楽をCDで聴いていた。

そんな中で出会ったミュージシャンの中にロバート・ジョンソンというミュージシャンがいた。
ロバート・ジョンソンは歌いながら1本のギターでメロディー・ベースライン・リズムを同時に弾くという驚異的な技術を持っていた。
彼は、ずぶの素人だったに関わらず、わずか2年でその驚異的な技術を身に付けたため「十字路で悪魔に出会い、魂を売る代わりに恐るべきテクニックを身につけた」という「クロスロード伝説」を生み出している。
演奏が凄かったのもあるが、その「クロスロード伝説」がお話として抜群に面白いことに惹かれ、私はしょっちゅうCDで演奏を聴いていた。
彼の演奏は歌もギターも抜群に上手いのに、どことなく不安定で不気味で、その不気味さがなんとも癖になった。この不気味さがあるから「クロスロード伝説」なんていう与太話が今でも囁かれ続けているのだろうと思っていた。

ある日、ロックの歴史について学ぶ授業で、ロバート・ジョンソンが取り上げられた。
授業は彼の不幸な生い立ちから始まり、2年間の失踪を経てプロとして活動し、わずか27歳で死んだこと、その後、エリック・クラプトンやローリングストーンズに大きな影響を与えたことなど「クロスロード伝説」を知ってる者なら誰もが知っている話で進んでいった。

私は正直もう散々聞いた話だったので、少々飽き飽きしていた。

授業の最後にロバート・ジョンソンの曲を流すことになった。当時の音をそのまま聴かせるためにレコードで流すという。
曲が流れ始めた。いつも聴いている、どう聴いても2人で弾いてるとしか思えないギターが聴こえる。すばらしい演奏だ。CDよりも少し艶があるような気がする。

そこに歌が重なる。
なんだ、これは。
CDとまるで違う!

怒りと悲しみと喜びと不安を同時に全力でぶつけられたような、およそ人間が持てるとは思えない激情が溢れ出している。どれだけ不幸な目にあい、どれだけ絶望し、どれだけ希望を抱けばこんな声が出るのか。
そこには何かに呪われ、憑りつかれてでも音楽に執着する、悪魔がいた。

その歌を聴くと呪われそうな恐ろしさがあった。怖かったがどうしても耳が離せなかった。怖いのに心地よいのだ。永遠に聴いていたくなる。

レコードはこんなとんでもない音が出るのか。いままで聴いてきた音楽は何だったのだと思った。

その後、私はレコードを聴き漁った。また、あの感情を揺さぶられるような音に出会いたいたかったのだ。
それまで、CDで聴いて気に入っていたミュージシャンのうち、レコードを出しているものは軒並聴いた。

そこにはあのものすごい音が眠っているはずだった。しかし、必ずしもそうではなかったのだ。

ロバート・ジョンソンのように圧倒的にCDよりもレコードの方が音が良いものもいくつかあったが、CDの方が良く聴こえるものもたくさんあった。
色々聴いてみて分かったのだが、その音楽が録音された年代でだいたいどちらの音が良いか分かれているようだ。具体的には1980年代よりも前はレコードの方が基本的に音が良く、1990年代は若干レコードの方が音が良いものが多く、2000年代より後は基本的にCDの方が音が良い。

この年代による傾向はレコードとCDの音の特性と録音・編集方法がかなり違うこと、そしてCDの録音技術の発展により生じていると思われる。
つまり、レコードしかなかった時代に録音されたものはレコードのままの方が音が良く、CDが普及してから2000年まではCDの録音技術が発展するに従い、CDの音が良くなっていったのだ。

2000年以降にレコードの方が音が良いものがあるのは、偶然レコード寄りの録音になっていたということも考えられるが、ほとんどのものは意図的にレコード用に録音しているからだろう。例えばだが、「ザ・クロマニヨンズ」は全曲レコードに録音していることで有名で、レコードで聴くと音の迫力に驚かされる。

近年、レコードの売り上げが伸びていることもあり、レコード用の録音をするミュージシャンは増えてきている。
もし、あなたが好きなミュージシャンがレコードを出しているなら、聴いてみるといいかもしれない。レコードにはあなたの知らない、その人の真実の姿が宿っているかもしれない。

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